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フラット35が不動産投資に使えない理由について!不正利用のリスクも解説

不動産投資

中野 治

筆者 中野 治

宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー®️・古家再生投資プランナー®️・一級建物アドバイザー
20年以上の経験を活かし、住宅購入や不動産、資産運用、ライフプランに関するアドバイスを提供。初めての不動産売却や物件購入、借り換えを検討中の方に寄り添った提案が得意。セミナーやブログを通じて、不動産や資産形成に関する情報を発信中。

不動産投資をしたいと考えている方にとって、資金をどうやって調達するかは重要な問題です。

近年、不動産投資において、フラット35を不正利用するケースが相次いでおり、注意が必要です。
今回は、フラット35とはどのようなものか、不動産投資には使えない理由、フラット35を不正使用するとどうなるのか解説します。

フラット35とは

「フラット35」が不動産投資には使えない理由とは

フラット35は、独立行政法人住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供している、長期固定金利の住宅ローンです。
最大の特徴は、35年間金利が固定である点で、一般個人がよりリスクを抑えてマイホームを取得できる仕組みとして、多くの方に活用されています。
金利が固定であるだけでなく、融資対象となる物件に対して一定の品質基準を設けており、品質の高い住宅を取得できることも魅力のひとつです。

雇用形態に関わらず利用できる

フラット35は、職業や雇用形態に関わらず利用できます。
一般的な住宅ローンでは、契約者の勤務先や雇用形態、年収などの条件が厳しく、住宅ローンを利用したくてもできない方がいました。
しかし、フラット35は、契約者の雇用形態に関わらず利用できるため、国の政策として個人がマイホームを取得しやすい仕組みとして活用されています。

不動産投資には利用できない

フラット35は、自分や家族が住むための住宅を建てたり購入したりするための住宅ローンです。
そのため、投資目的の不動産購入には利用できません。
しかし、2018年にフラット35が本来の目的とは異なり、投資用物件の購入に不正利用されていたことが発覚しました。
その後の住宅金融支援機構の調査により、住宅売主および不動産仲介事業者が関与した、多くの不正利用が特定されました。
この結果を受けて、金融機関は融資の審査を強化しましたが、その後も同様の不正は続いており、大きな社会問題となっています。

不動産投資におけるフラット35の不正利用の実態

不動産投資におけるフラット35の不正利用の実態

本来は自らが居住するための住宅ローンであるフラット35を、不動産投資用物件の購入に不正利用するケースが相次いで発覚しました。
不動産投資におけるフラット35の不正利用には下記のようなものがあります。

投資用物件の取得

フラット35の不正利用では、住宅購入者が不動産業者などの勧誘によって、自己居住用と偽ってフラット35を申し込んだケースが確認されました。
なかには、フラット35のローン負担を購入物件のサブリース賃料で返済できる、リスクのない不動産投資であると勧誘を受けて住宅を購入したケースもあります。
さらに、業者はフラット35の言葉を使用せずに「融資のために住民票を移して」「購入時には自分で住むと言ってください」などと誘導してくるようです。
ほかにも「数年住んでから貸せば不正にはなりません」などと説明するケースもありますが、フラット35は完済するまでは他人に貸すことはできません。
具体的な不正手法では、投資用の物件に住民票を移し、自己居住を偽装する方法があります。
しかし、実際には違う場所に住んでいるため、発覚するリスクは高いでしょう。
ほかにも、実際には入居する意思がないのに、入居予定と虚偽申告してフラット35の申請時に入居条件を満たしているように見せかける不正手法もあります。
これは書類上の不正のため、発覚しにくい点が問題です。

住宅購入価格を水増し

実際に売主に支払われた住宅購入金額とは異なる、水増しされた金額で融資を受けているケースが確認されています。
水増しされた価格が記載された売買契約書が不動産業者などによって作成され、住宅購入者に署名・押印させたうえで金融機関に提出されていました。
この不正手法は不動産業者との共謀が必要なので、組織的な不正と言えるでしょう。
ほかにも、借入可能額を増やすために、給与明細や確定申告書を改ざんする手法、実際には頭金がないにもかかわらず、短期借り入れで一時的に資金を調達する頭金の偽装もあります。

不正利用発覚の経緯

不動産業者などの主導により、フラット35の不正利用が多発している問題については、2019年5月に朝日新聞によって報じられたことをきっかけに広く知られるようになりました。
その後、住宅金融支援機構の調査により、2019年8月までに113件の不正利用を特定、2019年末までに162件の不正利用が特定されました。
なかには、物件の価格を実際より高く見せかけて多くの融資を受け、その資金を契約者の個人的な返済に充てていたケースもあります。
購入者の多くは20代から30代の単身者で、不動産の担当者から「今ある借金が帳消しにできる」などと勧誘され、購入していたケースも多いです。
購入者は投資用物件に住宅ローンを利用すると契約違反になると知らず、さらにフラット35の金利が利用されていることにも疑問を持たずに購入していたようです。

不動産投資でフラット35を不正利用したらどうなる?

不動産投資でフラット35を不正利用したらどうなる?

フラット35を利用する予定があるなら、フラット35の不正利用をしてしまった場合、どうなるのか知っておく必要があります。
ここからは、不動産投資でフラット35を不正利用したらどうなるのか解説します。

契約違反とみなされる

フラット35を不動産投資目的で不正利用した場合、契約違反とみなされます。
それがたとえ、不動産業者から言葉巧みに勧誘されて契約してしまったケースだとしても、不動産投資は自己責任でおこなうものであり、責任が問われないものではありません。
契約違反とみなされたら、住宅ローンの一括返済が求められます。
その場合は、金融機関に相談して、不動産投資用のローンへ切り替える方法もありますが、金利が倍になるでしょう。
ただし、金融の世界は信用を重んじるため、悪質な不正利用の場合は、今後同じ金融機関から融資を受けることは難しいかもしれません。
もし、本来不正利用ではなくマイホームとして実際に住んでいた方が、転勤によって住めなくなり人に貸すケースでは、住宅ローンの継続または投資用ローンの借り換えも可能な場合もあります。

一括返済を求められる

フラット35を不正利用していることに気づいたら、対象物件をすぐに売却して、その売却益で住宅ローンを一括返済する方法があります。
投資用ローンに切り替えるとしても、フラット35を不正利用している状態の方に、新たな融資をしてくれる金融機関はなかなか見つからない可能性があります。
なるべく早い段階で、不正利用の状態を解消するほうが良いでしょう。
フラット35は国がおこなっている政策の一環であり、フラット35の不正利用は、国をだます詐欺と言えるものです。
フラット35の不正利用が多数発覚した結果、住宅金融支援機構はフラット35に対して制度改正をおこないました。
これにより、すでに不動産投資をおこなっている方が、マイホーム購入のためにフラット35を利用するハードルが高くなってしまいました。
一部の不正利用のせいで、将来のために正しく投資用ローンをおこなっている方まで影響が出てきています。

まとめ

フラット35とは35年間金利が固定の住宅ローンですが、本人かその親族が居住するための住宅のみの制度で、不動産投資には利用できません。
しかし2019年に、投資用物件にフラット35を不正利用するケースが多数発覚し、社会問題となりました。
フラット35を不正利用すると契約違反とみなされ、住宅ローンの一括返済が求められるほか、金融機関からの信用を失う可能性があります。


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