不動産売却における契約不適合責任とは?買主の権利もご紹介!

不動産売却

中野 治

筆者 中野 治

宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー®️・古家再生投資プランナー®️・一級建物アドバイザー
20年以上の経験を活かし、住宅購入や不動産、資産運用、ライフプランに関するアドバイスを提供。初めての不動産売却や物件購入、借り換えを検討中の方に寄り添った提案が得意。セミナーやブログを通じて、不動産や資産形成に関する情報を発信中。

不動産売却における契約不適合責任とは?買主の権利もご紹介!

不動産を売却するときには、契約不適合責任に注意しなければなりません。
しかし、初心者の多くは、契約不適合責任がどのようなものか知らないでしょう。
そこで今回は、不動産売却で押さえておきたい契約不適合責任とは何か、買主の権利やインスペクションを実施するメリットをご紹介します。

不動産売却で押さえておきたい契約不適合責任とは

不動産売却で押さえておきたい契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、不動産売買において売主が買主に対して負う責任です。
不動産の売買契約において、引き渡された物件の種類・品質・数量が契約内容と適合しない場合、売主は買主に対してその責任を負うことになります。
契約不適合責任の主な内容は、以下のとおりです。
契約不適合責任が問題になるケースとあわせて確認しておきましょう。

不動産売却における契約不適合責任の内容

契約不適合責任の内容は大きく分けて、4つあります。
まずひとつは、修補や代替品納入の責任です。
契約不適合責任が生じた場合には、設備の修理や交換に応じなければなりません。
また、買主側に損害が発生したときの損害賠償責任もあります。
引き渡し後に不動産の不具合が発覚したときには、買主に損害賠償を支払う必要があるでしょう。
さらに、代金減額や契約解除に応じる責任が挙げられます。
引き渡し後に発覚する不動産の不具合には、雨漏りやシロアリ被害などが含まれることがあるため、十分に注意が必要です。

不動産の売却で契約不適合責任が問題になるケース

不動産売却で契約不適合責任が問題になるケースとして、まず売買した商品に品質の不良があった事例が挙げられます。
売買契約書に記載されている内容と異なる商品を提供したときには、売主が契約不適合責任を負わなければなりません。
工事内容をよく確認し、契約書と合っているかチェックしてから引き渡しをおこなう必要があるでしょう。
また、不動産の不具合に関しても、売主は責任を負わなければなりません。
雨漏りやシロアリ被害があった事実を隠していると、契約不適合責任に問われる可能性が高まります。
その他、工事内容の不備にも注意が必要です。
不動産の工事内容に不備があったときには、買主に損害賠償を請求されるおそれがあります。

契約不適合責任で認められている買主の権利

契約不適合責任で認められている買主の権利

契約不適合責任における買主の権利は、以下の4つです。
それぞれの特徴を押さえておき、事前に対策しましょう。

買主の権利①追完請求

追完請求とは、不動産の売買契約で引き渡された内容物が契約書と適合しないときに、買主が売主に請求できる権利です。
買主は、契約内容を適合させるために、内容物の補修や不足分の引き渡しなどを要求できます。
なお、不備や不具合が複数あるケースでは、どのような方法により履行の追完を求めるか選択可能です。
しかし、原則として、売主は買主が選択した方法とは異なる方法により、履行の追完をおこなえます。
これは、売主を保護するためであり、売主の負担が大きくなるのを防ぐ働きがあるのです。

買主の権利②損害賠償請求

不動産売買において、買主は損害発生時に損害賠償の請求ができます。
履行の追完請求をしても損害が解消されないときには、この手段を用いるのが一般的です。
ただし、売主の責任によって発生した損害ではないケースなら、損害賠償は請求できません。
履行の追完請求をおこなう前に損害賠償が請求できるのか明確な決まりはないため、不動産売却時にトラブルになりがちです。
揉めごとを避けるためには、追完請求が必要かどうか契約書に明記しておくと良いでしょう。

買主の権利③代金減額請求

代金減額請求とは、契約不適合責任が生じたときに買主が代金の減額を要求できる仕組みです。
この権利を実行するには、いくつか要件を満たさなければなりません。
そのひとつは、不適合を知ったときから1年以内に不適合である旨を通知することです。
買主が売主に履行の追完を催告し、追完されないときに代金減額請求をおこないます。
催告しても追完を受ける見込みがないときには、催告なしに減額請求できるので注意しましょう。

買主の権利④契約解除

不動産の売買契約を解除する権利は、買主にも認められています。
買主に認められた解除には、「催告解除」と「無催告解除」の2種類があります。
催告解除では、買主が相当な期間を定めて履行の追完請求をおこなったのにもかかわらず、売主が応じないときに解除可能です。
一方、無催告解除は、催促なく契約の一部を解除できます。
売主が履行を拒絶したケースや履行が不能のケースでは、無催告解除が適用されるでしょう。
不動産売却では、これらの権利に注意しながら、契約書を作成していくことをおすすめします。
とくに、初めて不動産を売却する方は、法律的な知識が少ないケースがほとんどです。
疑問点は、早めに弁護士や不動産会社に相談しましょう。

不動産売却で押さえておきたいインスペクションのメリット

不動産売却で押さえておきたいインスペクションのメリット

不動産売却では、公平な取引をするために告知義務が存在します。
告知義務とは、不動産の瑕疵を買主に伝える行為です。
不動産売却で考えられる瑕疵には、「物理的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」「法的瑕疵」の4種類があります。
なかでも、雨漏りやシロアリ被害などの物理的瑕疵は、引き渡し後に買主とのトラブルにつながる可能性があるので、事前の対処が必要です。
おすすめの対処法として、売却前におこなうインスペクションが挙げられます。
インスペクションは、既存住宅状況調査のことです。
専門家が建物の劣化や不具合を調査し、欠陥の有無・補修箇所などを客観的に検査します。
売却前に不動産の状態が把握できるため、告知内容も詳細に記載しやすくなるでしょう。
売却前にインスペクションを実施するメリットは、以下のとおりです。

買主とのトラブル防止になる

インスペクションを実施していれば、売却予定の不動産にどのような問題があるか把握できます。
調査の結果、雨漏りやシロアリ被害の補修費用が必要になっても、問題を解決した状態で売却が可能です。
売却後のトラブルを未然に防げるため、スムーズな取引がおこなえるでしょう。
また、インスペクションで不動産の情報を開示すると、買主が見つかりやすくなります。
売りに出してもなかなか売れないときは、インスペクションの実施を検討するのもひとつの手段です。

不動産の価値を高められる

売却前にインスペクションを実施すると、不動産の資産価値が向上する可能性があります。
建物の不具合を明確にして修繕すれば、早期・高値売却も期待できるでしょう。
不動産売却を成功させたい方は、インスペクションの実施を視野に入れてみることをおすすめします。
注意点として、インスペクションを実施するには、まとまった費用が必要です。
調査内容によって相場は異なりますが、基本料金のみなら4万〜6万円ほどでおこなえます。
基本料金に含まれるのは、「構造」と「雨漏り」の調査であるケースがほとんどです。
それ以外の屋根や床下は、オプションとして1万〜8万円ほどかかります。
また、報告書の作成料金も必要となっており、調査費とは別に約1万円かかるのが一般的です。
売却前にインスペクションを実施するときには、予算を考慮する必要があります。

まとめ

契約不適合責任とは、不動産の売買契約で引き渡された物件の種類・品質・数量が契約内容と適合しなかったときに売主が買主に対して負う責任です。
不動産売買における買主の権利には、「追完請求」「損害賠償請求」「代金減額請求」「契約解除」の4つがあります。
売却前にインスペクションを実施しておくと、不動産の状況を把握できるため、買主とのトラブルも未然に防止できるでしょう。


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