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ロンドンは下落、日本はどうなる? 「住宅価格暴落論」とはならない背景

不動産市況

中野 治

筆者 中野 治

宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー®️・古家再生投資プランナー®️・一級建物アドバイザー
20年以上の経験を活かし、住宅購入や不動産、資産運用、ライフプランに関するアドバイスを提供。初めての不動産売却や物件購入、借り換えを検討中の方に寄り添った提案が得意。セミナーやブログを通じて、不動産や資産形成に関する情報を発信中。

ロンドン中心部の住宅価格が下落しているというニュースは、日本の不動産市場を見るうえで無視できない。

特に注目すべきは、単なる景気後退や一時的な需要減ではなく、各国政府が住宅価格の高騰を抑えるために、政策的に市場へ介入し始めているという点。

イギリスでは、海外居住者による住宅購入に対する印紙税の上乗せや、2軒目以降の住宅取得に対する課税強化が行われてきました。さらに、富裕層向けの税優遇見直しも重なり、ロンドン中心部では外国人投資家が離れ、価格下落が目立つようになっている。

カナダでは、外国人による住宅購入を原則禁止する措置が延長された。オーストラリアでも、外国人投資家による中古住宅購入を制限する動きがある。イタリアでは、外国人購入そのものを一律に止めるというより、短期賃貸や富裕層税制、住宅供給策を組み合わせながら、住宅が投資商品化しすぎることへの調整が進んできた。

こうした流れを見ると、世界の住宅市場ではすでに、「住宅は誰のためのものか」という問いが政策課題になっていることがわかる。住宅価格が上がりすぎ、地元住民が住めなくなる。観光客や投資家にとっては魅力的でも、生活者にとっては手が届かない。そうした状況への反動として、各国は税制や規制を通じて市場の熱を冷まそうとしている。

では、日本、とくに東京の不動産市場も同じように下落局面へ向かうのか。

結論から言えば、単純に「ロンドン中心部が下がったから東京も下がる」とは考えにくい。理由は、金利、外国人比率、人口動態、供給構造が大きく異なるからである。英国でも近郊では値上がりし、数日で売れていく物件も多数ある。

まずは金利。イギリスやカナダ、オーストラリアでは、インフレ抑制のために金利が大きく引き上げられました。住宅ローン金利が上がれば、購入可能額は一気に下がる。ロンドンの価格調整は、税制だけでなく、金利上昇による購買力低下も大きな背景にある。

一方、日本でも金利上昇圧力はあるが、欧米ほど急激ではない。住宅ローンの返済負担はじわりと重くなりつつあるものの、現時点では欧米型の急ブレーキとはかなり違う。この差は、不動産価格への影響を考えるうえで非常に大きい。

次に、外国人投資家の比率だ。ロンドンやバンクーバーでは、海外マネーが高級住宅市場を大きく押し上げてきた。そのため、外国人への課税や購入規制が入ると、価格への影響も大きくなる。

東京でも海外投資家の存在感は増している。円安によって、海外から見た東京の不動産は相対的に割安に映る。都心の高額マンションや収益不動産に海外資金が流入しているのは事実。ただし、日本の住宅市場全体が外国人投資家だけで形成されているわけではない。とくに実需向けの中古マンションや戸建市場では、国内需要が依然として中心である。

三つ目は人口動態だ。日本全体では人口減少が進んでいる。しかし東京、とくに都心部や交通利便性の高いエリアでは、人口や世帯の集中が続いています。ここが地方市場との決定的な違いだ。

地方や郊外では、今後も人口減少、空き家増加、買い手不足の影響を強く受ける地域が増えていく。一方で、東京23区の中心部や、台東区・文京区・中央区・墨田区のように都心近接性が高いエリアでは、住宅需要が急に消えるとは考えにくい。日本の不動産市場は一枚岩ではなく、都心と地方でまったく違う相場になっていく可能性が高いとみている。

四つ目は供給である。日本では建築費、内装材、設備機器、人件費、物流費が上がってきている。さらに納期遅延もあり、新築を大量に供給しにくい状況が発生してきている。これは価格の下落圧力というより、むしろ新築価格を下支えする要因にもなっている。


もちろん、価格が高すぎれば買い手は慎重にならざるを得ない。金利が上がれば、購入予算も削られる。その意味で、東京も無風ではないだろう。すでに高額物件では、買い手の目線が厳しくなり、価格に見合う納得感が求められるようになってきている。

ただし、ロンドン型の急落がそのまま東京で起きるかというと、現時点ではかなり条件が違うとみている。むしろ日本で起きる可能性が高いのは、全面的な暴落」ではなく「選別」ではないか。

都心部、駅近、管理状態の良いマンション、再開発や生活利便性の高いエリアは、引き続き底堅い。一方で、地方、郊外、流動性の低い物件、修繕負担の大きい築古物件、賃貸需要の弱いエリアでは、価格維持が難しくなる可能性がある。

つまり、これからの不動産市況を見るうえで大切なのは「日本の不動産は上がるのか、下がるのか」という大き過ぎる問いではない。

重要なのは「どの市場の、どういった需要に支えられている価格なのか」。

ロンドンの下落は、日本市場に対する警告ではあると見える。しかし、「東京もすぐ暴落する」という意味ではなく、過剰に投資マネーへ依存した市場は、政策や金利の変化で大きく揺れるという警告だ。

日本でも今後、外国人投資家への課税、空き家課税、短期賃貸規制、相続・固定資産税の見直しなどが議論されるだろう。もしそうなれば、影響を受けるのは全国一律ではなく、投資需要が強く入りすぎたエリアや、実需の裏付けが弱い市場からになってくるだろう。

市況判断として見るなら、現在の日本市場は「危ないからすぐ売る」という局面ではないが「何を持っていても安心」という局面でもない。

不動産市場は需給だけでなく、金利や税制と政策によって大きく方向づけられるということ。日本でも、都心と地方、実需と投資、築浅と築古、管理良好物件とそうでない物件の差は、今後さらに広がっていく。

不動産市場を見るときには、数字だけでなく、構造を見ること。

これが、海外市場の調整局面から日本が学ぶべき最も重要な視点ではないか。

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