
千葉豪雨のあとにみえるもの|「蓮葉果紅」復旧ボランティア
令和8年8月千葉豪雨。
熊本地震からまもない先週のこと、線状降水帯による記録的な大雨で、千葉県内、各地で冠水や道路の損壊、農地への浸水など、大きな被害が発生した。まずは、熊本地震、そして今回の千葉豪雨により亡くなられた方々に心よりお悔やみ申し上げます。また、被災され、今も生活や仕事に大きな影響を受けている皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
私が事務局を務める、いきものにスペースを返し、生態系の回復を目指すGive Space Urban Design(GSUD)。そのフィールドワークの場として継続的に訪れている蓮葉果紅も、今回の豪雨で蓮田を中心に大きな被害を受けていた。
豪雨の翌日は通行止めになっていた東金道路も、私が向かった8月16日(日曜日)は山田ICまでは走行できるとのこと。レンタカーで一路、Googleマップのナビに従いながら、千葉市緑区の「蓮葉果紅」へ向かった。
「豪雨災害のあとの現地へ」
途中には、まだ冠水している道路もあり、ルートは慎重に選ぶ必要がある。中野ICから現地へ近づいていくにつれ、いつもとは違う、得も言われぬ静けさが周囲を覆っていた。
道路には剥離や陥没の跡。ガードレールには、流されてきた草や枝が大量に絡みつく。収穫を目前にした水田では、稲が軒並みなぎ倒され、水に浸かっている。
稲は倒れて水に浸かった状態が長く続けば、穂から発芽してしまい、品質や収穫に影響する可能性がある。
報道では、冠水した道路や交通機関など、都市インフラへの被害がどうしても目につくが、実際に現地へ赴くと、農業への影響がとても気になる。
田畑は、用水路、灌漑設備、道路、井戸など、周囲のさまざまなインフラとつながっているから、道路や水路が壊れれば、そこから土砂や砂利が流れ込む。水の流れが変われば、作物を育ててきた土地そのものが大きく変わってしまうのだ。
水害は、単に「水につかる」だけでなく地域を支えてきた水と土と人との関係が、崩れてしまうことなのだと、現場に立って強く感じた。復旧には時間がかかる。

「蓮田に水の流れを戻す」
蓮葉果紅に到着、この日の作業は、蓮田の復旧だ。幸い、母屋や小屋は少し高い場所にあり、大きな浸水は免れていた。
地下水を汲み上げる井戸も修理によって再稼働し、水道も無事。蓮田へ再び水を送ることはできそうだ。しかし、洪水によって蓮田の周囲は大きく変形していた。
決壊した畦や水路。大量に流れ込んだ泥、土、砂利。この日は、雨の合間を縫って土嚢をつくり、崩れた場所を補修し、水の通り道をつくっていく。
午前中はまだ天候が不安定で、作業を始めると激しい雨が降り、止むとまた外へ出る。その繰り返し。午後も引き続き、泥や砂利を動かし、堀を整え、水が流れる状態を少しずつ取り戻してきた。重機もない、とても地道な作業だ。
土を掘る。泥を運ぶ。土嚢を積む。水の流れを見て、土を掘る。
一つひとつ進めながら、蓮田の回復を祈る。人の手でできることの小ささ、小さな手が集まることの大きさを、同時に感じる。

「花は咲く」
蓮葉果紅の代表、成瀬久美さんのメッセージより「洪水によって流れ込んだ重い籾殻や砕石に押しつぶされ、多くの蓮の葉が倒れてしまった。その中から、一輪の蓮が自ら立ち上がり、花を咲かせようとしていた。」
泥にまみれた蓮田はただ「守ってあげるだけの存在」ではない。人間の想像を超えるほど脆くもあり、同時に、驚くほどしなやかでもある。できることは、蓮田が立ち上がれる条件を整えることだけである。
この日は、一人のボランティアとして参加してきた。今必要なのは、場所の原状回復。泥を運び、水路を直し、水を流す。蓮葉果紅には、普段から多くの人が農業ボランティアとして集まる。今回も、被災直後から仲間たちが駆けつけ、復旧作業を進めていた。
周囲には、倒れた稲、冠水した農地、壊れた道路や水路が広がっている。水が引いたあと、初めて見えてくる被害もあるだろう。農地の回復には時間がかかる。
私自身も、月内にあと何度か現地を訪れ、原状回復に力を貸したいと思う。自然災害によって土地が傷ついたとき、地域はどう回復していくのか。農業と水、道路、生態系、そして人の営みは、どのようにつながっているのか。復旧の過程そのものから、私たちが学べることは多い。
豪雨のあと。鉄砲水で流れ込んだ泥の中。それでも蓮は立ち上がり。花は咲く。

(洪水後の水たまりに残されためだかたち)

続く復旧
今回の豪雨は、首都圏ではめったに経験しない規模の被害をもたらした。
道路や水路などの復旧には行政の力が欠かせない。一方で、被害が広範囲に及べば、すべての場所にすぐ対応することはできない。行政の対応を待ちながら、自分たちでできる復旧作業を続けているのだ。
水が引けば終わりではない。道路を直す。水路を戻す。農地に流れ込んだ泥や砂利を取り除く。倒れた作物をどうするのか判断する。農業を再開できる状態まで戻すには、まだまだ時間と人の手が必要だ。
ぜひ災害の現場を知ってほしい。
現地へ行くことだけが支援ではない。被害の状況を知る。誰かに伝える。必要な情報をシェアする。必要な物資や支援があれば協力する。そして、受け入れ態勢が整っている場所でボランティアに参加することもできる。
災害は「対岸の火事」ではない。日本で生きる以上「明日は我が身」。しなやかでレジリエンスのある、リジェネラティブな土地(都市・地域)づくりを思う。
