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不動産売却時の減価償却とは?減価償却の計算方法や注意点について解説

不動産売却

中野 治

筆者 中野 治

宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー®️・古家再生投資プランナー®️・一級建物アドバイザー
20年以上の経験を活かし、住宅購入や不動産、資産運用、ライフプランに関するアドバイスを提供。初めての不動産売却や物件購入、借り換えを検討中の方に寄り添った提案が得意。セミナーやブログを通じて、不動産や資産形成に関する情報を発信中。

不動産売却で利益が出た場合、翌年に確定申告が必要になります。

確定申告の際は、建物の減価償却を理解しておくことが重要です。
本記事では、不動産売却における減価償却費とはなにか、確定申告時における減価償却費の計算方法とその注意点について解説します。
不動産売却を検討中の方は、ぜひご覧ください。

不動産売却における「減価償却費」とは?

不動産売却における「減価償却費」とは?

不動産の売却を検討するうえで「減価償却費(げんかしょうきゃくひ)」を耳にすることがあるかもしれません。
減価償却費とは、建物などの資産が年数の経過や使用によって価値が下がっていく分を、毎年一定額ずつ費用として計上する会計上の仕組みを指します。
土地は経年劣化しないため、一般的に減価償却の対象にはなりませんが、建物などの固定資産は法定耐用年数に基づいて少しずつ減価償却をおこないます。

減価償却費のポイント

不動産を売却する際、減価償却費は「譲渡所得」を計算する際の重要なポイントです。
建物の取得費は、減価償却費によって価値が下がった分を考慮して算出されるため、購入時よりも建物の取得費が小さくなることがあります。
たとえば、10年前に2,000万円で購入した建物を売却する場合、減価償却費相当額を差し引いた分が「建物の取得費」として認められます。
購入当初の取得費をまるごと経費にできるわけではないので、売却前にはどのくらい減価償却をおこなってきたかをしっかり確認することが大切です。
「自分の物件はどのくらいの耐用年数で減価償却しているのか」「どの方式で減価償却費を計上するのか」を把握しておくと、売却時の予想利益や税負担の見通しが立てやすくなります。

減価償却の対象となるもの

減価償却の対象になるのは、取得費が10万円以上で耐用年数が1年以上の固定資産です。
たとえば、事業で使う機械や自動車だけでなく、購入金額によってはスマートフォンやパソコンなども該当します。
不動産も減価償却の対象に含まれますが、土地は対象外なので注意しましょう。
建物と違って、土地は経年劣化しないと考えられているためです。

不動産売却における減価償却費の計算方法と確定申告について

不動産売却における減価償却費の計算方法と確定申告について

不動産を売却するとき、建物部分の「減価償却費」をどう計算するかによって、最終的な譲渡所得(売却益)が大きく変わる場合があります。
また、譲渡所得が生じる場合には、確定申告をおこなう必要があります。
不動産売却時における減価償却費の計算方法と、確定申告の必要性を確認する方法は、以下のとおりです。

減価償却費の計算方法

減価償却費を計算する方法には、「定額法」と「定率法」の2つがあります。
定額法は毎年同じ額を減価償却する方法です。
定率法では初年度に比較的多くの額を減価償却し、時が経過するにつれて減少していく計算方法です。
2016年(平成28年)4月1日以降に購入された不動産については、とくに届出をおこなわない場合、定額法が適用されます。
自宅の減価償却費を定額法で計算する場合の式は以下のとおりです。
減価償却費=建物部分の取得費×0.9×償却率×経過年数
まず、建物の購入費用(取得費)を元に計算します。
取得費とは、家を購入する際にかかった総費用を指し、建物の購入代金も含まれます。
ただし、土地の費用は含めません。
家の価格には、土地と建物の合計が含まれているため、建物と土地の価格を分けて考える必要があります。
売買契約書を参照して、それぞれの価格を確認しましょう。
次に、建物の構造に基づいて償却率を決定します。
たとえば、鉄筋コンクリート造は0.015、木造は0.031です。
償却率は、建物の耐用年数が長いほど低く設定され、国税庁のホームページで確認できます。
経過年数も計算に必要です。
6か月以上の端数がある場合は1年として切り上げ、6か月未満は切り捨てます。
たとえば、所有期間が5年2か月なら5年、5年8か月なら6年と計算します。

確定申告が必要かどうかを確認する

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対しては翌年に確定申告が必要です。
譲渡所得の計算は以下の式でおこないます。
譲渡所得=物件の売却代金-(取得費+譲渡費用)
「取得費」とは、自宅を購入した際にかかった仲介手数料や不動産取得税などの費用です。
「譲渡費用」とは、売却時にかかった仲介手数料や印紙税などの費用のことを指します。
取得費を正確に計算するためには、減価償却費を差し引く必要があります。
たとえば、購入時の価格が8,000万円で、減価償却費が864万円だった場合、取得費は「8,000万円-864万円=7,136万円」です。

不動産売却時に押さえておきたい減価償却費の注意点

不動産売却時に押さえておきたい減価償却費の注意点

不動産を売却する際は、建物の減価償却費を正しく把握しておかないと、譲渡所得(売却益)の計算を誤ってしまうおそれがあります。
誤算によって税負担が想定より増えるケースもあるため、以下のポイントをしっかり確認しておきましょう。

注意点①概算取得費

相続した不動産を売却する際、元々の取得費を証明する書類がないことがよくあります。
その場合、売却金額の5%を仮の取得費(概算取得費)として計算する方法が認められています。
しかし、概算取得費を用いると、実際よりも譲渡所得が大きくなる可能性が高いです。
その結果、譲渡所得が思ったより大きくなり、納める税金が増えたと感じることもあるでしょう。
したがって、取得費を正確に計算し、税負担を適正に保つためには、取得時の費用を証明できる書類をできるだけ多く準備することが重要です。
実際の取得費をしっかりと確認してから申告すると、税金を多めに支払うリスクを避けることができます。

注意点②譲渡損失の特例

不動産売却で譲渡損失が生じた場合、確定申告の義務はありません。
しかし、譲渡損失の特例の適用のために確定申告をおこなうと、税金を節約できる場合があります。
譲渡損失の特例は「損益通算」と呼ばれ、年間の所得から損失を差し引くことができる制度です。
たとえば、土地や建物の売却で400万円の損失が発生した場合、その損失を他の所得と相殺することができます。
損益通算により総所得が減少し、支払う税金も少なくなるため、節税につながります。
また、損益通算してもなお損失がある場合は、3年間にわたって繰越控除をおこなうことも可能です。
ただし、特例を適用するためには、確定申告をおこなう必要があるため、損失が出た場合でも確定申告を忘れずにおこないましょう。

注意点③土地は減価償却の対象外

土地は建物と異なり、経年で価値が下がるものではないと考えられているため、減価償却の対象には含まれません。
取得費を計算する際は、建物部分のみ減価償却費を差し引く点に注意しましょう。
土地の取得費は、購入にかかった費用をそのまま計上します。
建物と土地が一括で売買された場合は、契約書や見積書をもとに、建物と土地の価格を明確に分けておく必要があります。

まとめ

不動産売却における減価償却とは、確定申告時に建物の取得費から法定耐用年数に応じた割合で、経年劣化分の価値の減少を差し引くことを指します。
減価償却費の計算方法は、定率法と定額法の2種類があり、基本的には定額法で計算します。
注意点は、概算取得費を適用すると譲渡所得が実際よりも高くなる可能性があること、譲渡損失が出た場合でも確定申告をおこなうこと、土地は減価償却の対象外な点です。


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