不動産売却後に確定申告は必要?確認する方法や忘れた場合のリスクを解説の画像

不動産売却後に確定申告は必要?確認する方法や忘れた場合のリスクを解説

不動産売却

中野 治

筆者 中野 治

宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー®️・古家再生投資プランナー®️・一級建物アドバイザー
20年以上の経験を活かし、住宅購入や不動産、資産運用、ライフプランに関するアドバイスを提供。初めての不動産売却や物件購入、借り換えを検討中の方に寄り添った提案が得意。セミナーやブログを通じて、不動産や資産形成に関する情報を発信中。

不動産を初めて売却する際、確定申告が必要かどうか迷う方も多いでしょう。

この記事では、不動産売却後に確定申告が必要かを確認する方法や、申告を忘れた場合のリスク・ペナルティ、税金を軽減できる特例について詳しく解説します。
不動産の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

不動産売却後の確定申告が不要かどうかを確認する方法

不動産売却後の確定申告が不要かどうかを確認する方法

不動産を売却した場合、譲渡所得(売却益)が発生したときは、その翌年に確定申告を行う必要があります。
しかし、売却益が発生していない場合は、基本的に確定申告は不要です。
確定申告が必要かどうかを確認する方法について解説します。

課税譲渡所得の確認方法

不動産売却後に確定申告が必要かどうかは、課税譲渡所得の有無によって決まります。
正確に計算し、必要な対応をおこないましょう。
課税譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
『課税譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)』
課税譲渡所得が0円またはマイナス(譲渡損失)の場合、基本的に確定申告は不要です。
それぞれの費用について詳しく見てみましょう。
取得費
取得費とは、不動産を購入した際にかかった費用です。
以下のようなものが含まれます。

●購入代金
●不動産取得税
●売買契約書に貼った印紙税
●購入時の仲介手数料
●所有権移転登記の登録免許税


これらは購入時の売買契約書や領収書を確認するとわかります。
もし取得費が不明な場合、売却代金の5%を取得費として代用できます。
譲渡費用
譲渡費用は、不動産売却にかかった諸経費を指します。
例として、仲介手数料や測量費などがあります。

譲渡損失の場合は確定申告が不要?

課税譲渡所得の計算で譲渡損失が発生した場合、基本的には確定申告をおこなう必要はありません。
ただし、次のような場合は例外となります。
損益通算をおこないたい場合
譲渡損失は確定申告によって、給与所得や事業所得などと相殺(損益通算)できます。
その結果、総所得が減少し、税負担が軽減されます。
税務署から問い合わせがあった場合
税務署は、所有権の移転登記を確認することで、不動産の売却事実を把握します。
申告をおこなわない場合でも、税務署から問い合わせを受けることがあります。
その際には、課税譲渡所得が0円またはマイナスであることを説明し、証拠となる書類を提示できるようにしておきましょう。
課税譲渡所得がないことを証明するため、以下の書類を用意しておくと安心です。

●売却時と購入時の売買契約書
●仲介手数料や測量費の領収書


これらの書類を保存し、万が一税務署から連絡があった際に対応できるよう備えましょう。

不動産売却後に確定申告を忘れた場合のリスクと対処法

不動産売却後に確定申告を忘れた場合のリスクと対処法

不動産を売却した後、譲渡所得が発生していたにもかかわらず、確定申告を忘れたり不要と勘違いしていた場合、思わぬリスクやペナルティを受ける可能性があります。
続いては、そのリスクと対処法について解説します。

確定申告を忘れた場合のリスク

故意の場合は「逋脱犯」とみなされる
確定した税額を不正な手段で納付しない場合、「逋脱犯」として刑罰の対象となります。
逋脱犯に対する罰則は、以下のとおりです。

●10年以下の懲役
●1,000万円以下の罰金
●またはこれらの併科


逋脱犯は故意の脱税行為を指しますが、たとえ故意でなくてもリスクは大きいため、早急な対応が必要です。
税務署が税額を勝手に決める可能性
申告がなされない場合、税務署が独自に税額を決定することがあります。
その際、実際より高く見積もられるリスクがあるため、注意するようにしましょう。
銀行融資が受けられない
確定申告をおこなわないと、銀行の融資審査に必要な書類(決算書など)が提出できません。
その結果、融資が受けられず、事業や生活に影響を及ぼす可能性があります。

確定申告を忘れた場合の主なペナルティ

無申告加算税
期限内に確定申告をしない場合、「無申告加算税」が課されます。
無申告加算税は、期限内に申告しなかった場合に課される追加税で、税額に応じて15%または20%が課されます。
ただし、自主的に申告をおこなった場合、軽減されることがあるでしょう。
延滞税
期限までに納税を行わない場合、「延滞税」が課されます。
延滞税は、未納税額に法定の割合をかけ、日数に応じて加算されます。
そのため、速やかに納税することで負担を最小限に抑えることが重要です。

確定申告を忘れた場合の対処法

すぐに確定申告をおこなう
法定期限を過ぎていても、早めに確定申告をおこなうことで無申告加算税が軽減されたり、免除されたりする場合があります。
また、延滞税の発生を最小限に抑えることができます。
必要書類を準備する
売却時と購入時の売買契約書、仲介手数料や測量費の領収書などを揃えて、正確な課税譲渡所得を計算しましょう。
これにより、税務署の推定による過剰な課税を防ぐことができます。
税務署に相談する
税務署に状況を説明し、対応方法について指示を仰ぎましょう。
誠実な対応を示すことで、ペナルティが軽減されることがあります。

確定申告を忘れないための対策

今後、確定申告を忘れないためには以下の方法がおすすめです。

●不動産売却時に税理士に相談する
●売却にかかる費用や収入を記録・保存する
●確定申告の時期にリマインダーを設定する


確定申告を忘れると、重いペナルティや金銭的負担を招く可能性があります。
売却後は速やかに収支を整理し、適切な手続きをおこないましょう。

不動産売却の確定申告で使える特例

不動産売却の確定申告で使える特例

不動産売却の確定申告では、特定の条件を満たすことで税負担を軽減できる特例があります。
これらの特例を上手に活用すれば、不動産売却時の税負担を大幅に軽減できるでしょう。
詳細は税理士や税務署に相談することをおすすめします。
以下では、主な3つの特例について解説します。

マイホームの3,000万円特別控除

自宅として使用していたマイホーム(居住用財産)を売却する場合、以下の条件を満たせば、譲渡所得が最高3,000万円まで非課税になります。
適用条件

●マイホームおよびその敷地や借地権を売却する
●解体した場合でも、譲渡契約まで土地を他の用途に使っていない
●売手と買手が親族や夫婦でない


この特例を利用することで、売却益が3,000万円以内であれば税金は発生しません。
特例の名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」です。

軽減税率の特例

3,000万円控除を利用しても譲渡所得が残る場合、「軽減税率の特例」を適用できます。
これは、売却時点で所有期間が10年以上の居住用財産が対象となります。
税率(3,000万円控除後の所得に適用)

●6,000万円以下:14.21%(所得税10.21% + 住民税4%)
●6,000万円超:20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)


通常よりも低い税率が適用され、税負担を軽減できます。

譲渡損失の買換え特例

マイホームの買い替えで売却損が発生した場合、一定条件を満たせば、損失を他の所得(給与所得など)と相殺できます(損益通算)。
また、控除しきれなかった損失は、翌年以降3年間にわたって「繰越控除」が可能です。
適用条件

●売却価格が1億円以下
●居住用財産として使用していたこと


この特例を利用すると、結果的に税金が減少し、会社員の場合は源泉徴収された所得税が還付金として戻ることもあります。

まとめ

不動産売却後の確定申告は、譲渡所得の有無で必要性が決まります。
譲渡所得が0円やマイナス(譲渡損失)の場合、申告は不要ですが、損益通算や税務署の確認対応が求められる場合もあります。
申告を忘れた場合のペナルティを回避するためにも、税務署や税理士のサポートを受けながら適切に手続きを進めることが大切です。


”不動産売却”おすすめ記事

  • 不動産売却前にリフォームしたほうがいい?メリットや費用相場を解説の画像

    不動産売却前にリフォームしたほうがいい?メリットや費用相場を解説

    不動産売却

  • 老後資金の準備方法について!自宅活用や不動産投資も解説の画像

    老後資金の準備方法について!自宅活用や不動産投資も解説

    不動産売却

  • 不動産売却時の減価償却とは?減価償却の計算方法や注意点について解説の画像

    不動産売却時の減価償却とは?減価償却の計算方法や注意点について解説

    不動産売却

  • ライフステージの変化に合わせた不動産売却とは?メリットや方法を解説の画像

    ライフステージの変化に合わせた不動産売却とは?メリットや方法を解説

    不動産売却

  • 不動産売却にかかる税金は3種類!譲渡所得税の計算方法や節税のコツを解説の画像

    不動産売却にかかる税金は3種類!譲渡所得税の計算方法や節税のコツを解説

    不動産売却

  • 不動産売却時の費用の種類・相場は?節約方法として活用できる控除も解説の画像

    不動産売却時の費用の種類・相場は?節約方法として活用できる控除も解説

    不動産売却

もっと見る