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相続した不動産を売却するまでの流れは?かかる税金や注意点を解説

不動産売却

中野 治

筆者 中野 治

宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー®️・古家再生投資プランナー®️・一級建物アドバイザー
20年以上の経験を活かし、住宅購入や不動産、資産運用、ライフプランに関するアドバイスを提供。初めての不動産売却や物件購入、借り換えを検討中の方に寄り添った提案が得意。セミナーやブログを通じて、不動産や資産形成に関する情報を発信中。

親や親族が亡くなると、不動産の相続権を得る可能性があります。

相続の手続きは複雑なものとなっているため、いつ来ても良いようにポイントを押さえておくことが大切です。
そこで今回は、相続した不動産を売却するまでの流れや発生する税金、相続物件を売るときの注意点を解説します。

相続した不動産を売却するまでの流れ

相続した不動産を売却するまでの流れ

不動産を相続したら、相続税の申告・納税を済ませなければなりません。
その後、売却の手続きに進むため、まずは相続税を納税するまでの流れを確認しておきましょう。

流れ①:相続人を把握する

相続が発生したときには、相続する財産と相続人を把握する必要があります。
ここで重要になるのが、遺言書の存在です。
遺言書があるケースでは、その内容に従い、ないときには相続人全員で遺産分割協議をおこないます。
遺産の分配方法や配分が決まったら、遺産分割協議書にまとめるのが一般的です。

流れ②:必要書類を準備する

遺産分割協議が終わると、相続登記や相続税の申告を済ませます。
相続登記に必要な書類は、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書、不動産の固定資産評価証明書などです。
書類によっては、発行までに時間がかかるケースもあるので、早めの段階から手配することをおすすめします。
また、相続税の申告期限は、相続を知った日から10か月以内です。
申告期限を過ぎると、延滞税や加算税がかかる可能性があります。
書類の不備や納税額の不足などが起きないよう、スケジュールには余裕を持って行動しましょう。

流れ③:不動産会社と媒介契約を結ぶ

相続登記と相続税の納付を済ませたら、不動産売却と媒介契約を結ぶのが一般的な流れです。
媒介契約の種類は、大きく「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類あります。
一般媒介契約のみ、複数の不動産会社と契約可能です。
より質の高い売却活動をおこないたい方は、1社のみと契約できる「専任媒介契約」あるいは「専属専任媒介契約」を選ぶことをおすすめします。
その後の手続きは、通常の不動産売却と同様です。
買主を見つけたら、売買契約を結び、決済・引き渡しへと流れが進みます。
不動産売却での必要書類には、購入時の売買契約書や登記済権利証などがあるので、早めに準備しておきましょう。

相続した不動産を売却するときにかかる税金

相続した不動産を売却するときにかかる税金

相続後の不動産売却では、譲渡所得税や印紙税、登録免許税が発生する可能性があります。
それぞれの計算方法や利用できる控除・特例を以下で確認しておきましょう。

売却後に発生する税金①譲渡所得税

譲渡所得税とは、譲渡所得に対してかかる税金です。
不動産売却で利益が出たときのみ課税される税金で、譲渡所得の計算には以下の方法を用います。
譲渡所得 =売却金額−取得費(購入時価格+購入時費用−減価償却費)−譲渡費用
取得費として認められるものには、購入時の仲介手数料や設備費などが挙げられます。
売却時の印紙税や立退料は、譲渡費用として算出可能です。
なお、相続の発生から3年以内の売却であれば、取得費に相続税の一定額を含められます。
この譲渡所得に税率をかけたものが「譲渡所得税」です。
税率は不動産の所有年数によって変わり、5年超保有したケースでは税率が「20.315%」となっています。
5年未満で売却したケースだと税率が「39.63%」になるので、5年超よりも2倍ほど高い税金がかかってくるでしょう。

売却後に発生する税金②:印紙税

相続後の不動産売却では、印紙税が発生します。
印紙税とは、不動産の売買契約書など課税文書にかかる税金です。
記載する契約金額に応じて税金が変わるので、事前に確認しておく必要があります。
たとえば、契約金額が1,000万円超5,000万円以下のケースだと、印紙税は1万円です。
印紙税の納税タイミングは、売買契約書の作成時となっているので忘れずに用意しましょう。

売却後に発生する税金③:登録免許税

登録免許税とは、不動産に設定されている抵当権を抹消するときにかかる税金です。
不動産1つにつき、1,000円の登録免許税が発生します。
登記手続きを司法書士に依頼するときは、別途報酬が必要です。
建物が建っているケースでは、土地と建物それぞれに登録免許税がかかるので注意点として押さえておきましょう。

利用できる控除・特例

相続後の不動産売却で利用可能な特例として、まず挙げられるのは「3,000万円の特別控除」です。
一定の条件を満たしてマイホームを売却したときには、譲渡所得から最大3,000万円まで控除可能となっています。
また、取得費加算の特例も利用できる制度のひとつです。
譲渡所得を計算するときに、相続税の一部を取得費に加算できるため、大幅な減税が見込めるでしょう。
相続を知った日から3年10か月が適用期限となっているので、早めに申請の準備を済ませておく必要があります。

相続した不動産を売却するときの注意点

相続した不動産を売却するときの注意点

親や親族から引き継いだ不動産を売却するときには、いくつか注意点を押さえておかなければなりません。
何も知らずに手続きを怠ると、罰則の対象となるので注意が必要です。

注意点①:相続登記は売却前に済ませる

不動産売却前には、相続登記の手続きが義務付けられています。
これは空き家問題の対策として講じられている手続きであり、申請を怠ると罰則が科せられるでしょう。
相続登記を正当な理由なく怠ったときには、10万円以下の過料が科される可能性があります。
遺産分割協議がまとまらないケースや、認知症の相続人がいるケースは正当な理由として認められるため、期限内に相続登記をおこなわなくても罰則の対象にはなりません。
なお、相続登記では戸籍や固定資産評価証明書の収集だけでなく、法務局への提出書類も作成する必要があります。
個人でおこなうより司法書士へ依頼したほうがスムーズに手続きが進む可能性があるため、知識に不安がある方は司法書士への依頼を検討してみましょう。

注意点②:売主には契約不適合責任がある

契約不適合責任とは、契約内容に適合しないときの売主責任です。
売主が契約内容と異なるものを売却したときには、買主から契約解除や損害賠償といった責任追及をされるおそれがあります。
よくあるトラブルとして、雨漏りやシロアリ被害などが挙げられるので、売買契約を結ぶときには不動産の状態をチェックしておくと良いでしょう。
正直に瑕疵の内容を伝えておけば、引き渡し後に責任が追及される心配はありません。

注意点③:遺産分割協議は相続税の申告期限までに終わらせる

遺産分割協議は、裁判外での話し合いとなるため、法的な期限は設けられていないことに注意しましょう。
しかし、相続税が課税されるケースでは、早めに話し合いをまとめておかなくてはなりません。
相続税の申告期限までに遺産分割協議を済ませておかないと、手続きの手間が増えたり、有利な制度を利用できなくなったりするので注意が必要です。
話し合いが進まないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるのも有効な手段となっています。
裁判所を介して話し合いをおこなえば、相続人だけ話し合うよりスムーズにまとまるでしょう。

まとめ

不動産を相続したら、まず相続人を把握して遺産分割協議をおこなうのが一般的な流れです。
相続後の不動産売却で発生する税金には、譲渡所得税や印紙税・登録免許税が挙げられます。
注意点として、売却前に相続登記の手続きが義務付けられているので、忘れずに申請を済ませましょう。


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