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負動産の相続について!処分方法や相続放棄の選択肢も解説

不動産売却

中野 治

筆者 中野 治

宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー®️・古家再生投資プランナー®️・一級建物アドバイザー
20年以上の経験を活かし、住宅購入や不動産、資産運用、ライフプランに関するアドバイスを提供。初めての不動産売却や物件購入、借り換えを検討中の方に寄り添った提案が得意。セミナーやブログを通じて、不動産や資産形成に関する情報を発信中。

不動産を相続したものの、活用が難しく悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

維持費や税負担が重くのしかかる「負動産」は、適切な対策を講じなければ大きな負担となります。
とくに、空き家を放置すると、固定資産税が増加する可能性があるため、早期対応が求められるでしょう。
そこでこの記事では、負動産の基本知識や適切な処分方法、相続放棄の選択肢について解説します。

負動産とはなにかについて

負動産とはなにかについて

近年、日本では「負動産」という言葉が注目されています。
これは、所有していることで経済的な負担が生じる不動産を指す言葉です。
とくに、相続によって取得したものの、利用価値が低く、維持管理や税金の負担が大きい不動産が該当します。

固定資産税

不動産を所有すると、毎年固定資産税が課されます。
この税金は、土地や建物の評価額に基づき算出されます。
一般的に、住宅用地には特例が適用され、税負担が軽減されるのです。
たとえば、200平方メートル以下の住宅用地の場合、固定資産税は本来の6分の1に軽減されます。
しかし、空き家を解体して更地にすると、この特例が適用されず、税額が4倍から5倍に増加することがあります。
さらに、適切に管理されていない空き家は「特定空家等」に指定されることがあるのです。
この指定を受けると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税負担が増加します。
これは、空き家の放置を防ぎ、適切な管理や活用を促すための措置です。
相続によって不動産を取得した場合、固定資産税の負担が新たに発生します。
とくに、利用予定のない不動産や需要の低い地域の物件は、売却や賃貸が難しく、固定資産税だけが負担となるケースがあります。
これが、「負動産」と呼ばれる所以です。

空き家

日本全国で、空き家の増加が社会問題となっています。
総務省の統計によれば、全国の空き家数は増加傾向にあります。
これらの空き家の中には、相続後に利用されず放置されているものも多く含まれているのです。
空き家を放置すると、建物の老朽化や倒壊のリスクが高まります。
また、不法投棄や犯罪の温床となる可能性も指摘されています。
これらの問題を未然に防ぐため、国や自治体は空き家対策を強化しているのです。
特定空家等に指定された場合、所有者に対して修繕や解体の指導がおこなわれ、従わない場合は行政代執行が実施されることもあります。
空き家を適切に管理・活用することで、地域の活性化や防犯効果が期待できるでしょう。
また、空き家をリノベーションして、賃貸物件やコミュニティスペースとして活用する事例もあります。
しかし、これらの活用には初期投資や維持管理の手間がかかるため、所有者の負担となることもあります。

負動産を処分する方法について

負動産を処分する方法について

所有することで経済的な負担が生じ、相続によって取得したものの活用が難しい不動産を処分することは、将来的な負担を軽減するためのポイントです。
以下に、主な処分方法を紹介します。

売却

負動産の処分方法としては、まず売却が一般的です。
不動産会社に仲介を依頼し、市場に出すことで買い手を探します。
しかし、需要が低い地域や状態の悪い物件では買い手が見つかりにくいことがあります。
そのような場合、隣接する土地の所有者に売却や譲渡を持ちかけるのも一案です。
隣地の所有者にとっては、土地を拡張できるメリットがありますが、価格交渉や境界の確認が必要となる場合もあります。
また、個人間の売買をマッチングするサイトを利用する方法も考えられます。
こうしたサイトでは写真や価格、物件情報を詳細に掲載できるため、従来の不動産会社を介さずに買い手を見つけられる可能性が期待できるでしょう。
ただし、サイトによっては利用料が発生する場合もあるため、事前の確認が必要です。

空き家バンク

空き家バンクは、自治体が運営する制度で、空き家の所有者と利用希望者をマッチングする仕組みです。
所有者は物件情報を無料で登録でき、移住や定住を希望する人々に物件を紹介することができます。
空き家バンクを利用することで、通常よりも安価に売却・賃貸が進むかもしれません。
また、自治体によっては空き家バンクを通じて取得した物件に補助金や税制優遇を設けている事例もあり、地域への定住促進や人口増加を図る自治体もあります。
ただし、この制度は物件情報の掲載が中心で、契約の仲介や成約の保証まではおこなっていません。
交渉や手続きは所有者と利用者が直接行う必要があるため、不動産業者などの専門家に相談すると安心です。

寄附

売却や賃貸が難しい場合、自治体や公益法人への寄附を検討する方法もあります。
自治体によっては活用目的が明確な場合のみ受け入れられることがありますが、管理負担が大きいと判断されると拒否されるケースもあります。
さらに、隣接する土地の所有者に無償で譲渡することも可能です。
「土地を拡張したい」と考えている所有者にとってはメリットがある場合もあり、譲渡に応じてもらえる可能性があります。
ただし、個人間の寄附では受け取る側に贈与税が発生する恐れがあるため、税務上の手続きを確認することが大切です。
2023年から施行された、「相続土地国庫帰属制度」を利用することも可能です。
これは、一定の条件を満たす土地を国が引き取る制度で、審査手数料や負担金が必要となります。
ただし、条件が厳しく、すべての土地が対象になるわけではありません。
負動産の処分方法にはそれぞれメリットとデメリットがあり、物件の特性や状況に応じた選択が大切です。
専門家への相談や自治体の制度を活用することで、スムーズな処分が期待できます。

相続放棄で不動産の所有を回避する方法について

相続放棄で不動産の所有を回避する方法について

相続に際して、不動産を含む財産を引き継ぐことは一般的ですが、負債や管理が難しい物件を相続すると将来的な負担が大きくなる可能性があります。
このような場合、相続放棄によって不動産の所有を回避する方法があります。

手続き

相続放棄は、被相続人の財産や負債を一切承継しない制度です。
手続きとしては、相続の開始を知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述します。
この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、申述に必要な書類を揃えて提出し、受理されると相続人としての地位を失います。
なお、相続の開始を知った日がはっきりしない場合や、相続財産の調査に時間がかかるときなどは、家庭裁判所に熟慮期間の延長を申し立てられるケースも少なくありません。
期限を過ぎてしまうと相続放棄が認められなくなるため、早めに手続きを進めることが大切です。
相続放棄は自分でおこなうことも可能ですが、手続きの不備や期限管理などを考慮し、専門家に相談するのも有益です。

財産

相続放棄をすると、被相続人の財産だけでなく負債も引き継ぎません。
ただし、相続放棄をした者が相続財産を占有している場合は、その財産を適切に管理する義務が生じます。
被相続人と同居していた人が相続放棄をおこなった場合は、しばらくその不動産を管理しなければならないケースがあるため注意が必要です。
すべての相続人が相続放棄をすると、家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、財産を清算します。
最終的に、残余財産は国庫に帰属します。
相続放棄を検討する際は、財産や負債の状況を慎重に確認し、期限内に手続きをおこなうことが大切です。

まとめ

負動産は、維持費や税金の負担が大きく、早めの対応が求められる不動産です。
売却や空き家バンクの活用、寄附などの方法に加え、相続放棄による負担回避も選択肢となります。
不動産を相続する予定のある方は、適切な処分方法を検討し、早めに対策を進めることが大切です。


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