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代償分割とは?相続のメリット・デメリットや遺産分割協議書の書き方も解説

不動産売却

中野 治

筆者 中野 治

宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー®️・古家再生投資プランナー®️・一級建物アドバイザー
20年以上の経験を活かし、住宅購入や不動産、資産運用、ライフプランに関するアドバイスを提供。初めての不動産売却や物件購入、借り換えを検討中の方に寄り添った提案が得意。セミナーやブログを通じて、不動産や資産形成に関する情報を発信中。

相続予定の遺産に不動産が含まれているけど、相続人が複数いてどのように分けたら良いかわからないとお困りの方はいませんか。

不動産の相続に関する悩みは、相続方法の一種である「代償分割」の概要を確認すると払しょくできます。
今回は、代償分割とは何か、代償分割のメリット・デメリット、そして遺産分割協議書の書き方における注意点を解説します。

代償分割による相続とは

代償分割による相続とは

生前に被相続人が所有していた遺産を分割する方法は、以下の4パターンです。

●現物分割
●換価分割
●共有分割
●代償分割


現物分割とは、現金や土地、建物などの遺産を形を一切変えずにそのまま相続人で分割して受け取る相続方法です。
換価分割とは、土地や建物などを売却し、代金として得たお金を相続人で分配して受け取る相続方法を指します。
共有分割とは、遺産の一部もしくは全部を相続人どうしで共有し、受け取る相続方法です。
そして、代償分割とは、民法で定められた相続割合を超える遺産を受け取った相続人が、残りの相続人に対して代償金を支払う形で清算する相続方法を指します。

分割が難しい遺産の相続に有効

代償分割は、基本的に現金など分割しやすい遺産ではなく、土地や建物など複数の相続人で分割しにくい遺産の相続で用いられます。
具体的には、被相続人の持ち家で暮らしていた相続人が引き続き同じ家で暮らすケースや農業での活用に向けて事業用の不動産を相続するケースは、代償分割が選ばれやすいです。
被相続人が経営していた法人の引き継ぎに向けて、非上場株式を相続するケースでも代償分割による相続がおこなわれる傾向にあります。

代償分割による相続のケース

代償分割に対する理解を深めるためにも、相続方法として代償分割を選択したケースをみてみましょう。

●相続する遺産:現金1,500万円・不動産3,000万円
●相続人:被相続人の子どもA・B・C
●相続人1名あたりの法定相続分:1,500万円
●相続内容の内訳:Aは不動産3,000万円、B・Cは現金750万円


このケースでは、相続人1名あたりが相続する遺産は1,500万円ですが、結果としてAが3,000万円の不動産を相続しました。
ゆえにBとCの手元には、本来相続できる金額よりも安い750万円しか行き渡りません。
代償分割による相続では、法定相続分を超える遺産を受け取った相続人AはBとCに代償金として750万円ずつを支払い、相続分を平等にする必要があります。

代償分割による相続を選択するメリットとデメリット

代償分割による相続を選択するメリットとデメリット

相続方法として代償分割を選択するには、メリットやデメリットを知ったうえで決めることが大切です。

メリット1.共有名義での相続を回避できる

相続方法を代償分割にするメリットは、不動産を単独名義で所有できる点です。
不動産を共有名義として複数の相続人で所有する方法は、一見すると公平性があると思われがちですが、将来的に問題が発生するリスクがあります。
たとえば、被相続人の不動産を共有名義で取得すると、売却するために共有名義人全員から同意を得なければなりません。
共有名義人が亡くなると相続が発生し、そのたびに共有名義人が増え、すべての共有名義人を把握すること自体が困難になるおそれがあります。
代償分割で不動産を単独所有できれば、名義人の個人的な判断で売却もできるため、無駄に不動産を所有し続けなくても良いのです。

メリット2.相続した不動産を手放す必要がない

被相続人が遺した不動産を売却せずに済む点は、代償分割による相続を選択するメリットのひとつです。
換価分割による相続を選択すると、土地や建物を売却して現金化し、相続人の間で分配しなければなりません。
しかし、代償分割であれば代償金の支払いをもって相続の平等性が担保されるため、不動産をそのままの形で相続できます。
被相続人が大切にしていた自宅や家族の想い出が詰まった実家、先祖代々受け継いできた土地など、相続対象に大事な不動産が含まれているケースにおいて、代償分割はとくに有効性が高いです。
将来的に価値が上昇することを見越して、相続段階での売却を避けたいケースも同様、代償分割を選択すれば高い売却益を得られる可能性が高まります。

デメリット1.不動産の評価額が原因でトラブルに発展する

代償分割は、不動産評価額の決め方がきっかけとなり、代償金トラブルに発展するリスクがあります。
不動産を代償分割で相続すると代償金の支払いが生じますが、負担する代償金額は不動産の評価額にもとづいて決定します。
不動産評価額の決め方には、相続税評価額をはじめ、時価(実勢価格)や公示地価など複数あり、どの方法を用いて評価するかは決められていません。
不動産を相続する方は評価額を下げて負担額を減らすべく安い評価方法を、代償金を受け取る方は受け取る金額を高くするために評価額が高い方法を選びたくなるでしょう。
代償金を支払う方と受け取る方の間で意見が対立し、評価方法を決める段階でトラブルとなり、相続をきっかけに関係が悪化するケースもあるのです。

代償分割による相続前に確認したい遺産分割協議書と相続税

代償分割による相続前に確認したい遺産分割協議書と相続税

代償分割で不動産を相続するには、遺産分割協議書の書き方と相続税として納める金額の2点を確認しておくことが大切です。

遺産分割協議書の作成における注意点

遺産分割協議書とは、相続人で話し合って決めた相続方法や相続割合などをまとめた書類です。
遺産相続では、相続方法に関わらず作成されるものですが、代償分割による相続では、「代償分割を選択した旨」を明記しなければなりません。
仮に代償分割を選択した旨を明記せず遺産分割協議書を作成すると、不動産の相続人が負担する代償金が贈与とみなされ、贈与税が課されるおそれがあります。
代償分割による相続を選択したにもかかわらず、代償分割が認められないと余分な税負担が発生するため、遺産分割協議書は十分注意して作成することが求められます。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書を作成するには、まず被相続人が亡くなり相続が発生した年月日と相続人の氏名、遺産分割協議をおこなった旨を記載します。
次に、第1項として誰が不動産を相続するか、そして相続対象の不動産の所在や地番など基本情報を書きましょう。
遺産に現金などが含まれているケースでは、第2項以降に相続した旨を記載します。
遺産の分割内容を記載し終えたら、代償金を支払う方と受け取る方の氏名および支払い期日と金額を含め、不動産を相続する代償として支払うことをまとめましょう。
必要事項をすべて記載したら、遺産分割協議書を作成した年月日を記載し、すべての相続人の住所と氏名を書き入れ、実印を押せば作成完了です。

相続税の計算方法

代償分割による相続では、一般的な方法とは異なる仕組みで相続税を計算します。
なお、代償分割における相続税は、代償金を支払う方と受け取る方で計算方法が違う点を覚えておきましょう。
代償金を支払う方が負担する相続税額は、以下の計算方法で求められます。
不動産の相続税評価額を用いた計算方法 = 相続税評価額 - 支払う代償金
不動産の時価を用いた計算方法 = 時価 - { 支払う代償金 ×(相続税評価額 ÷ 時価)}
続いて、代償金を受け取る方の相続税額は、以下のとおりです。
不動産の相続税評価額を用いた計算方法 = 受け取る代償金
不動産の時価を用いた計算方法 = 受け取る代償金 ×(相続税評価額 ÷ 時価)
不動産の評価方法により計算方法も異なる点に注意しましょう。

まとめ

代償分割とは、代償金を負担する形で不動産など法定相続分以上の遺産を相続する方法です。
共有名義による相続を避けられるメリットがある一方、評価額の決め方で相続人の間でトラブルに発展するおそれがあります。
代償金が贈与税の対象にならないよう、遺産分割協議書には代償分割を選択した旨を忘れずに明記しましょう。


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